woman writing on a whiteboard

センターの問題とAレベルの問題を比べてみる

先週、東京私学教育研究所からの依頼があり、都内の先生がたを対象に研修をさせて頂いた。

授業の実践事例について紹介して欲しいというリクエストがあったので、13年間の実践を数点紹介した。その際、どの授業がどこを意識してやったのか、具体的に示すためにここ数年話題となっている「思考コード」を用いた。

思考コードはブルームのタキソノミーを元に開発され、昨今のミネルバ大学の思考法などと親和性が高い。

参考 松下佳代先生@京都大学 「汎用的能力を再考する

下の図は国立政策研究所の資料や松下先生の論文を参考に、私が作ったモノ。

これを平成27日12月に高大接続システム会議資料で出された資料と比較すると、右上に行けば行くほど高度な思考力が問われ、同時に採点が難しくなる。すつまり、システム化が困難になる。

https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shougai/033/shiryo/__icsFiles/afieldfile/2015/12/22/1365554_03_1.pd

高大接続システム会議資料より

思考コードを参考にセンターとAレベルの問題を比較

わかりやすい例として、共通テスト(a.k.a.センター試験)からは日本史Bの問題を見てみる。この問題は明らかに思考コードでいえば「知っているか知らないか」というA1あたりに該当する。実は、共通テストの性質上、問題のレベルはA1−B2のあたりとなる。

一方、英国の大学入試問題(history)では、Q1はA2の問題。知識に加え、理由を説明する問となっている。さらにQ2ではBの一番上あたりからC、評価・創造の問題となっている。恐らくQ2に関しては正解不正解というよりもどれだけ説得力ある文章を書けるのかがポイントとなるだろう。

オックス・ブリッジの口頭試問(Aレベル後の面接)などに関してはこちらの本を参考にしてください。

入試問題や授業は一見する多様性がありますが、思考コード上にマッピングしてみるとどこらへんを学習効果として狙っているのかわかりますね!

先生の「考え方」が授業スタイルに大きく影響!

「教えること」について考えたことはありますか?

かなり古典的な研究ですが、ミッジレーらの研究によると、自分の授業力を固定的、つまり能力があるかないかで考えている先生は生徒を厳しいルールを作ったり、管理する傾向がある。(彼女らの研究では数学です)

この研究の背景には、1980年代頃にNicholls先生とかMiller先生が行った生徒の「自信」(もうちょっと詳しく書くと、課題に対する自信ね)の研究があって、それらによると、生徒は小学校の頃は自分の能力についてあまり深く考えないんだけど、中学校に入ることになると「努力」と「能力」について明確に意識し始めるらしい。

そこでマインドセットの話になっていくんだけど、生徒よりも先生達自身も自分たちの教え方をどう捉えているのか、つまり自分の専門性についての認識によって授業のバリエーションが変わってくるようだ。

まとめると、

専門性にたいして固定的、つまり能力がないと思っている先生は、管理主体の教え方、つまりカチッとした授業を好む。

一方、

専門性に対して漸進的、つまり努力で伸ばそうと思っている先生は、より自由度のある教え方、つまり協働学習などを好む傾向がある

ようだ。

あくまでも傾向があるだからね・・・。

先生自身も自分はどういった「考え方」をしているのか振り返ってみる必要ありますね!

また、管理職の人だったら、どのようなタイプの先生が多いのだろうか分析することが大切ですね。

http://education-webfiles.s3.amazonaws.com/arp/garp/articles/eccles88f.pdf

見たこと、聞いたことから想像する習慣を身につけよう

クラシエさんの知育メイト仲間、藤原麻里奈さんの本が面白い。

彼女は2013年頃から「無駄作り」の活動を始め、今となっては世界で人気のYoutuberだ。

その彼女が最近出した本、読みだしたら止まらなくなった。明け方に読み始めたら、あっという間に読み切った。

その中で特に面白いと思ったのは、藤原さんのアイディアを思いつくための哲学について書かれたところ。

『Chapter 8「考え方」を考える』

アイディアは、いつどこで思いつくか誰にもわからない

藤原麻里奈「考える術」より

この言葉いいですね!

実は、同じようなことを言っている人がいました。IDEOの創設者、Tom Kelleyはアイディアが出てきたときに書き留めるために

  • ベットの横にノートを置く
  • シャワールームのガラスは書き込みが出来るもの

置いてあったそうです。

藤原さんがアイディアを出すときにヒントとしてあげているのは、

自分はこの考え方だとアイディアを出しやすい
この場所だとアイディアを出せる

これに似たものをnoteに書いています。

また、

短時間で考える
ぼーっと考える

というのも重要だと述べています。

アイディアというのはずっと考えていても出てくるモノではなく、実は短時間でたくさんアウトプットを出して寝かしておくというのが重要なようです。

また、非日常の空間で脳をリセットするのも重要です。これは脳科学界隈でも言われていることです。

IDEO社のTim Kelleyがアイディアが出てくる瞬間、すなわち寝るときとかシャワーを浴びているときはリラックスしている時なんですね−。

以前私が入試が観察力を問う問題が出てきているよと書くと、twitter上で

観察力が重要なのはわかるけど、日常生活が入試のためになるのは嫌だな

という反応がありました。

このことに「うーん、なにかいい回答はないかな」と考えていたところ、藤原さんの言葉が!

日ごろからこうして見るもの、聞くものに対して、どんな想像ができるか考えることを習慣にしたい

確かに、入試のために観察力を身につけるってダルいですよね。

そうでなく、「見たものからいろいろなことを想像する習慣」ってのを身につけたいですよね。

世界1のデザインファームと謳われるIDEOのTom Kelleyもこんなふうにいっていますよ。

If you want to transform your life from mere duty to real passion, you have to start by realizing that your current situation is not the only option open to you. You can change how you live and how you work.

自分の人生を単なる義務から本当の情熱に変えたいと思うなら、まず現状が自分にとって唯一の選択肢ではないことを認識することから始めなければなりません。生き方や働き方を変えることはできるのだから。

『クリエイティブ・マインドセット』より

アクティブラーニングの原型「バズ学習」

そもそもアクティブラーニングってなんだろう?

中央審議会(2012)によると次のように定義されている。

生涯にわたって学び続ける力、主体的に考える力を持った人材は、学生からみて
動的な教育の場では育成することができない
。従来のような知識の伝達・注入を中心
とした授業から、教員と学生が意思疎通を図りつつ、一緒になって切磋琢磨し、相互
に刺激を与えながら知的に成長する場を創り、学生が主体的に問題を発見し解を見い
だしていく能動的学修
(アクティブ・ラーニング)への転換が必要である。すなわち
個々の学生の認知的、倫理的、社会的能力を引き出し、それを鍛えるディスカッショ
ンやディベートといった双方向の講義、演習、実験、実習や実技等を中心とした授業
への転換によって、学生の主体的な学修を促す質の高い学士課程教育を進めることが
求められる。学生は主体的な学修の体験を重ねてこそ、生涯学び続ける力を修得でき
るのである。

中央審議会 新たな未来を築くための
大学教育の質的転換に向けて

そして、アクティブ・ラーニングの方法として

  • グループ・ディスカッション
  • ディベート
  • グループワーク

などなど、の協働学習が重要であると記されている。

そもそも、なぜにアクティブ・ラーニングが叫ばれるようになったかというと、2016年の中央審議会で出された3つの視点、「知識・技能」「思考力・判断力・表現力等」「学びに向かう力・人間性」が重要だったりする。リンクはここ

バス学習とは

アクティブ・ラーニングというのは、基本的に協働学習であり、その原型が実は1948年、今から70年も前にドナルド・フィリップス先生よってに考案されたDiscussion 66という教授法だったりするというのは結構驚きですね。

討論66、akaバスセッションとは至ってシンプル。たぶん、それフツーにやっていますという先生多いと思うんですね。でも、奥さん、これ70年前ですよ!

ステップ1

小グループを作る。出来れば、話し声が聞こえないように座るのが好ましい。

ステップ2

リーダーを選出。グループの話をまとめたり、代表で全体に報告する。

ステップ3 

議論の課題を提示。6分間ディスカッション。話の内容を記録する。

ステップ4

各チームで出てきたアイディアを評価し、全体会で発表。

ステップ5

全アイディアを全体の場で提示。可能だったら見せる。教員(ファシリテーター)はコメントを入れる。

日本では名古屋大(当時)の塩田先生が1956年に教科の学習に取り入れ、一般に知られるようになりました。(今でも知らないよ、というツッコミはなし)

塩田先生の伝説の名著、『授業活性化の「バズ学習」入門』は現在、なんと、廃刊!!

しかし、あと30名のポチで復刊される模様!

ここ

バズ学習を取り入れるメリット

1 心理的圧迫が少ない

2 学習内容の定着

3 適切な運営と学習者理解

などなどあります。ただし、これは「教えない授業」ではありません。

先生が一方的に教えるのではなく、先生は学習環境を整え、脱線することなく上手くファシリテートする力が必要となります。

生徒たちに新しい視点が求められるのと同じように、先生たちにも「教える」だけでない「導く」力を身につけなければならないようです。

参考

https://note.com/playfulquest/n/n971dc9f85e71

赤ちゃん、ハイハイを学ぶ

教員生活をもうかれこれ10年以上しているので、

「どうすれば難関大に合格できますか」

ということを頻繁に聞かれます。私は、

「受験はただのゲームです」

といつも答えるようにしています。

なぜなら大学に入るまでの勉強は

大体パターンが決まっていて、

それを愚直に繰り返すだけである程度は

伸ばすことは可能です。

そして、日・米・蘭の大学院で学んだ経験上、

そして日本では所謂「偏差値の高い高校」の

卒業生に数多く出会ってきた。

中高時代いくら成績が良くても、

大学に入った途端にパッとしなくなる人は多いようです。

それはなぜでしょうか?

そもそも中高と大学の「学びのルール」が異なるからです。

そして、もう1つ。

自分の「学び方の特性」を分かっていないから。

逆に、自分の学び方を分かっている人ほど、

大学の学びがハマります。

このことは学校での学びよりも、

学校外での学びで顕著になるようです。

人の知性は様々

ハーバード大学教育大学院教授、H・ガードナー先生の

(超)有名な理論、多重性知能理論によると、

「人の知性は多様である」とされている。

(*近年はさらに種類が増えたり・・・それは割愛します。)

先生のよると、人の知性は大きく

以下のような知性に分けられるそうです。

このなかで「学校のテストで評価できている項目」はどれでしょうか?

そう、「ことば」の項目だけなのですね。

つまり、

学校という教育現場では授業をちゃんと聞き、

テストで記憶をあますことなく再生できる

子供ほど優秀とされるです。

これはどういうことかというと、

先ほどのtwitterとも関連していますが、

早くから子供の言語力を伸ばすことの出来る環境にあれば、

自ずと学校での成績は良くなる、ということになります。

じゃ、それでいいじゃん、先取り学習最高!

とならないのが、学びの世界。

ガードナー先生も言っているように

「学び」は様々な知性の組み合わせであり、

「言語能力」だけでは不十分なのです。


赤ちゃんでさえ学び方が異なる

ニューヨーク大学のカレン・アドルフ教授は、

乳児の年齢、体格、経験がハイハイの発達に

及ぼす影響を、初めてハイハイをしようとした

時から歩行を始めるまでの28人の乳児を

縦断的に観察して調査しました。

すると、ほとんどの乳児が歩行に至るまでに

複数の這い這いの姿勢をとるようになりましたが,

その発達は段階的な進行に沿ったものではなかったのでした。

つまり、28人の赤ちゃんでさえハイハイの学び方

多様であることが示されたのです。

ガードナー教授の多重知能理論にしかり、

アドルフ教授の赤ちゃんの研究にしかり、

人の「学び」には様々なパターンがあることが示されています。

赤ちゃん関係で有名なのはこちら↓

自分のことをすこし振り返ってみよう

「こうすれば絶対に・・・大に合格」
「家族全員東大に入れた・・・」

というノウハウ本が書店には溢れています。

そして、キャッチーなタイトルが

子育て・教育への万能薬感を醸し出しています。

しかし、人の成長に唯一の成功パターン

専門用語では「経路の原理」(Pathways principle) 

というのは存在しません。残念ながら。

人は多様な知性と持てる様々能力をフル活用して

学んで成長しているのです。

では、どうすればいいのでしょうか?

それには自分の得意なパターンを見つめることが重要です。

上手くいったのはどんなときですか?

やってて楽しいと感じた時はどんなときですか?

自分で振り返ってみるのもいいですし、

仲の良い友人に「どんなときに楽しそうに学んでいたのか」

聞いてみるといいでしょう。

学ぶのが楽しい

そう感じたときにあなたの知性・能力は最大限に

発揮されているのです。

人のやり方を真似るのではなく、

そして、義務のよう学ばされているのではなく、

みなさんが「学んでいて楽しい」と感じられる瞬間を

見つけられるといいですね。

こちらもよろしくお願いします!

https://note.com/playfulquest